カテゴリー: 滑川H邸 破風 2020.10.1

滑川H邸徹底解剖 ⑧金物と小庇

ぐるっとまわって、東側の妻面です。

 

2階の梁間(建物の幅)が2間半(4,550㎜)なので、小ぶりなかわいさが際立っています。

妻面に正対して見ると、破風板の形がよく分かりますね。

東側の妻面。2階がちょこんと載っている感じがかわいらしい

写真左側(南側)の軒の出は約4.5尺(1,365㎜)、

右側(北側)の軒の出は3尺(910㎜)、

若干違います。

 

 

錆びて茶色に変色しているため見えにくいですが、破風板の先端には

飾り金物が付いています。

鯖の尾。雨水から木口を守りつつ、デザインで魅せる

一方が二又に分かれています。

これは「八双金物」〈はっそうかなもの〉、「鯖の尾」〈さばのお〉といいます。

破風板の先端や重厚な門扉に使われることが多い金物です。

 

おそらく竣工時から付いていたもので、茶色に錆びている様子から

素材は亜鉛鉄板(いわゆるトタン)かと思います。

 

60~70年くらい経てば、このくらい錆びてしまうのは仕方がありません。

破風板の木口を風雨から守る役目は十分に果たしているでしょう。

 

コストを優先するならこのままでも構いません。

取り替えるとすればトタンではなく、現在一般的に使われている耐久性の高い

ガルバリウム鋼板とするのが定番です。

 

さらに耐久性の高い銅板という選択肢もありますが、

全体的な印象からすると、銅板ではバランスが悪くなりそうです。

 

 

 

 

写真は、東京にある護国寺惣門の扉です。

江戸時代中期、元禄年間の建物で、文京区の指定有形文化財になっています。

護国寺惣門の扉の鯖の尾

こちらの鯖の尾は、飾りでもありますが扉の補強を主目的としています。

なので金物が厚めです。

 

他の飾り金物と同じように緑青をふいています。

ということは、素材は銅板ですね。

 

 

 

さて、

西側に比べると、破風板・押縁下見板・板金包みなどの構成は同じです。

ひとつ違うのは、窓の上に小庇〈こびさし〉がある点です。

窓の上の小庇。これがあるとないでは、雨の吹き込みに大きな差が出る

庇の出は2尺(610㎜)程度、垂木のサイズが小さく、ピッチは150㎜と細かく入っています。

 

 

意匠的な決まりごとや大原則をいうと、

「大きいところは大きくまばらに」「小さいところは小さく細かく」。

部材はそんなふうに構成します。

 

思い出してみましょう。

外壁の下見板の押縁は455㎜ピッチでしたが、戸袋鏡板の簓子は150㎜ピッチでした。

同様に、

屋根の垂木のピッチは364㎜でしたが、小庇の垂木は150㎜です。

 

 

 

それは瓦も同じです。

門や塀などの瓦は屋根より一回り小さな瓦を使います。

大寺院の本堂のような大規模な屋根は、座布団くらい大きな瓦を使います。

 

大きいところは大きく、小さいところは小さく。

このような視点で古民家や古建築を見てみると、新しい発見があるかもしれません。

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