縁側の足元を見てみましょう。
まず、高さ50㎜程度のコンクリート製基礎があります。
基礎には床下換気口が取り付けられています。
基礎の上に土台が廻っています。
サッシを載せている縁框〈えんがまち〉と土台の間には床下をふさぐ板がはめられています。
この「ふさぎ板」は下側にすべて同じ文様があり、板の中央には菱形の孔が
2カ所あいています。
この孔はふさぎ板を外すときの手掛けです。
こういう、ちょっとしたところに意匠が施してあるのがいいですね。
しかも、ただのデザインではなくて実用も兼ねている。
床下は、竿や棒など外部で使う長い物、多少汚れてもいいようなものを仕舞う場所です。
床下といえども、デッドスペースにはいたしません。
ただ、ふさぎ板があるだけまだましと言えなくもありませんが、
床下は基本的には外気にさらされているので、冬の室内は超寒くなります。
下手すると、外に出たほうが暖かいのではないかというくらいの寒さです。
縁側の床は日射しを浴びると暖かくなりますが、早朝になれば外気と変わらない温度まで
下がります。
ここを歩くと足の裏がキンキンに冷えます。
なので、昔は縁側の床に絨毯などを敷いてやり過ごしている家がよくありました。
じつはこのお宅も絨毯が敷いてありました。
改修時にはびっちり断熱材を入れます。
写真は、大正時代の古民家の縁側です。
このように、昔は縁側の下は開放されていました。
束や柱脚の下にわずかに束石(礎石)が見えます。
ただし、あとから打たれた犬走りと高さがほとんど変わりません。
おそらく周囲の地盤面が上がり、束石(礎石)と同じくらいの高さでないと
犬走りが打てなかったのでしょう。
こうなると、犬走りが雨で濡れると、同時に束や柱脚も濡れてしまいます。
濡れるということは、腐朽が早くなるということです。
つまり、この束廻りは悪い例です。
(写真は束や柱脚が一度腐ったので不陸調整用パッキンを入れています)
こういうときどうするかというと、過去の再生工事では、
当初の地盤面に近い高さまで建物の周囲を鋤取り〈すきとり〉して、
犬走りが濡れても束の木口から水を吸い上げないような処理をしました。
地盤面というのは、周辺の環境にもよりますが100年で10㎝くらいは上がります。
当初は機能していた建物周囲の排水処理が機能不全に陥ると、
束や土台などが腐朽していきます。
古民家を改修する際は、建物本体だけでなく建物の周囲も注意して見ていかなければ
ならないということです。