1階に注目してみましょう。
間取りでいうと、右側が玄関、その左側が縁側、写真では見えませんがその左側が戸袋です。
掃き出しのアルミサッシの上はガラスの欄間になっています。

黄色い壁のように見えますが、アルミサッシの上はガラスです。欄間は凝ったデザイン
欄間は柱間の2間半(15尺=4,550㎜)を3等分した5尺(1,515㎜)ピッチに
吊束を入れています。
さらに、その吊束を4分割して桟木を3本入れています。
なかなか凝ったつくりです。
欄間の上の軒桁〈のきげた〉は、なんと丸太です。
これを「丸桁」〈まるげた〉といいます。
しかもこの丸桁、奥から手前まで継手が一切ない。
いわゆる「一本物」ではありませんか!
丸太の皮を剥いてそのまま使っているので、元〈もと〉は太く、末〈すえ〉
(木の先端方向)は細くなっています。
写真だと右から左にかけて細くなっているのが分かるでしょうか?
構造上、桁の上の垂木は平らに並べる必要があります。
施工の際、垂木の載る丸桁の上側を水平に合わせると、丸太の下側は水平になりません。
そのため柱や吊束は、手前(写真右側)にくるほど高さを低くする必要があります。
柱や吊束をあらかじめ同じ高さで加工できないので、
これはとてもの手間が掛かる作業といえます。
現在の家づくりは「プレカット」といって、必要な材料をあらかじめ工場で
加工してから現場に運んできます。
いまは捨て去られた技術や技法が、古民家にはたくさん残っているということです。
丸桁に近づいて確認してみました。
やはり、継手はありませんでした。

継手なし
長さ5間(9,100㎜)+αの一本物です。
なお、2階の桁を出桁〈だしげた〉にした場合でも、1階の軒は出桁にしないのが
一般的です。
軒は垂木だけが支えることになるので、2階に比べると軒の出はやはり浅くなります。
出は、おそらく標準の3尺(910㎜)でしょう。
ちなみに、2階の軒は4.5尺(1,365㎜)くらい出ていました(目視ですが)。