カテゴリー: 滑川H邸 垂木 2020.8.20

滑川H邸徹底解剖 ③一本物の丸桁

1階に注目してみましょう。

 

間取りでいうと、右側が玄関、その左側が縁側、写真では見えませんがその左側が戸袋です。

掃き出しのアルミサッシの上はガラスの欄間になっています。

黄色い壁のように見えますが、アルミサッシの上はガラスです。欄間は凝ったデザイン

欄間は柱間の2間半(15尺=4,550㎜)を3等分した5尺(1,515㎜)ピッチに

吊束を入れています。

さらに、その吊束を4分割して桟木を3本入れています。

 

なかなか凝ったつくりです。

 

 

欄間の上の軒桁〈のきげた〉は、なんと丸太です。

これを「丸桁」〈まるげた〉といいます。

 

 

しかもこの丸桁、奥から手前まで継手が一切ない。

いわゆる「一本物」ではありませんか!

 

 

丸太の皮を剥いてそのまま使っているので、元〈もと〉は太く、末〈すえ〉

(木の先端方向)は細くなっています。

 

写真だと右から左にかけて細くなっているのが分かるでしょうか?

 

 

構造上、桁の上の垂木は平らに並べる必要があります。

 

施工の際、垂木の載る丸桁の上側を水平に合わせると、丸太の下側は水平になりません。

そのため柱や吊束は、手前(写真右側)にくるほど高さを低くする必要があります。

柱や吊束をあらかじめ同じ高さで加工できないので、

これはとてもの手間が掛かる作業といえます。

 

現在の家づくりは「プレカット」といって、必要な材料をあらかじめ工場で

加工してから現場に運んできます。

 

いまは捨て去られた技術や技法が、古民家にはたくさん残っているということです。

 

 

 

 

丸桁に近づいて確認してみました。

やはり、継手はありませんでした。

継手なし

長さ5間(9,100㎜)+αの一本物です。

 

なお、2階の桁を出桁〈だしげた〉にした場合でも、1階の軒は出桁にしないのが

一般的です。

軒は垂木だけが支えることになるので、2階に比べると軒の出はやはり浅くなります。

出は、おそらく標準の3尺(910㎜)でしょう。

 

ちなみに、2階の軒は4.5尺(1,365㎜)くらい出ていました(目視ですが)。

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