小屋裏を深掘りします。
以前も書きましたが、ハツった曲がりのある小屋梁がふんだんに使われているのが
分かります。
梁の側面を見ると、墨で何か書いてあるようです。
これは水墨〈みずずみ、[陸墨:ろくずみ]とも〉と呼ばれるもので、
水平の基準となる線です。
梁がどれだけ曲がっていても、どれだけ傾いていても、
水墨が引かれていれば、その線が建物の水平を表す線として機能します。
大工さんはこの線を頼りに、他の梁や柱・束などの高さ関係を決めていきます。
部材の垂直を表すために上下中央に引かれる線を心墨〈しんずみ、真、芯とも〉と
いいますが、水墨と心墨を一緒に墨付けできると、
どのような曲がり梁でも加工が可能になります。
「曲がり」というのは単純な湾曲だけではありません。
ぐにゃぐにゃと3次元的に曲がっているものでも加工できます。
また、梁は水平ではなく勾配していても組むことができます。
曲がった梁に正確に墨付けをして架構を組むのが昔の大工さんの
腕の見せ所でした。
古民家ならではのダイナミックな空間のハイライトともいえます。
現在の大工さんでも墨付けに慣れている人は難なくこなしますが、
プレカットの部材に頼り切った経験不足の大工さんなら、
墨付け・加工は難しいと思われます。
小屋裏に、このような味わいある梁が隠れていたら儲けものですね。