改修前、前ノ間の東側には玄関から続く「通り土間」がありました。
今回の改修ではここにキッチンを新設しています。
もともと通り土間は、2階が載っていない下屋でした。
天井は張られておらず、屋根裏がそのまま見えていました。
床は土足のまま歩けるモルタル仕上げで、玄関と東側から出入り可能。
ここをキッチンに改修するにあたり、まずは屋根裏に繊維系断熱材を入れて
板張りで仕上げました。
天井は水平に張るほうが楽ですが、狭い部屋だと圧迫感があるので、
天井高さを稼ぐために屋根勾配なりに斜めに張っています。
梁との取り合い部などに施工手間が多少掛かりましたが、繋ぎの曲がり梁が天井の途中から
見えていて、いいアクセントになったように思います。
改修前は差鴨居の下に掃出しのサッシがあり、東側の外部から出入りできましたが、
改修後は出入りの必要がないので流し台の前を腰窓に変えています。
床は板張りに変更。
改修前は土間と前ノ間の床に40cmほどの段差がありました。
床はリビングダイニングの床と同じ高さで仕上げたいところですが、
そうするとキッチンの天井高さが確保できません。
そこで、あいだを取って20cm下がりをキッチンの床レベルとしました。
キッチンとリビングダイニングとの間に段差があると不便なようですが、
20cmといえば階段1段分くらいの段差なので、慣れれば問題ありません。
食器などを持って移動するとき、段差が数センチくらいだと逆に中途半端で
つまづくことがあります。
こういうときは、段差をつくらないか、階段1段分くらいはっきりつくるかの
どちらかですね。
キッチンの床レベルが1段下がると、リビングダイニングのイスに座った目線と
キッチンに立ったときの目線の高さが近くなり、互いに親密さが増すというメリットも
あります。
家づくりでは「目線の高さ問題」が常について回りますが、そういう意味では
うまく処理できたように思います。
キッチンはオールステンレスのシンプルな業務用です。
お施主さんがご自身で新古品を見つけて手配されました。
手前の棚は、キッチンとリビングダイニングの両方から使える配膳台です。
これがあるとないとでは便利さがずいぶん変わります。
キッチンの設計でいちばん大切なのは「配膳台!」といってもいいくらいです。