二間続きの和室のうち、前ノ間はダイニングに変更しました。
壁の仕上げは座敷と同じですが、床を畳敷きから板張りに変えて
テーブルや椅子を置けるようにしています。
現在、古民家を改修する場合は、座敷は残すもののそれ以外の部屋は
ほとんど板張りにするのが一般的です。
畳の上にテーブルや椅子を置いてもいいのですが、そうするとテーブルや椅子の
脚の部分だけ畳が凹んで傷みます。
凹みにくい家具もあるにはあるのですが、デザインの選択肢が狭くなるので
あまり現実的とはいえません。
床のフローリングは柱、梁、古建具の色に合わせつつやや明るめに
着色しました。
統一感のある穏やかな雰囲気になっています。
ダイニングの奥は、以前の通り土間からキッチンに変更しています(解説は後日)。
通り土間と前ノ間との仕切り使われていたガラス入り障子は、南側に
移動・転用しました。
また、ガラス入り障子を入れた面はコーナーに壁を新設しています。
古民家は建具に囲まれた開放的な田の字型の間取りが多いのですが、
その弱点は「壁が少ないこと」です。
壁がないと動線があちこちにできて便利な反面、モノが置けないという
不便さがあります。
それを解消するために壁を新設することがよくあります。
滑川H邸も壁のおかげでチェストなどのモノが置けるようになりました。
壁を設けたもう一つの理由は、構造上の強度を上げるためです。
新しく壁を設けた面(通り)は、2階の同じ面に壁が載っているので、
地震のときに大きな力が掛かります。
その力を受ける壁として、この新設された壁が機能します。
建物南面の耐震は、この新設した壁と縁側の押入れの壁が担います。
古民家を改修するときは、断熱性能を上げたり使い勝手がよくしたりするだけでなく、
耐震性を向上させることも大きなテーマです。
そういえば、前ノ間には「一段低い差鴨居の謎」という話がありました。
「本来、この差鴨居がある2畳分だけは、もともと土間だったのではないか?」と
以前のブログで推測していたわけですが、畳を上げて荒板を見たところ、
やはり2畳分だけ板が違いました。
というわけで、謎解きは予想通り正解でした。
次回はキッチンについて解説いたします。