カテゴリー: 滑川H邸 瓦屋根 縁側 2020.8.1

滑川H邸徹底解剖 ①小ぶりなサイズにビシッとした瓦

現在、「古民家〈断熱〉リノベーション」が改修している古民家「滑川H邸」(埼玉県)。

 

よく晴れた暖かい日に、改修前の写真を撮影してきました。

撮影した写真を見ながら、この建物ならではの特徴を解説してみたいと思います。

建物南側に大きな庭が広がる。環境は文句なしの素敵な古民家です

この古民家はいまから60~70年くらい前、お施主さんのおじいさん、おばあさんが

建てられ、住まわれていたものです。

 

古民家のなかには、いわゆる養蚕型民家のように屋根裏を3層、4層にしている大型の民家も

ありますが、これは比較的小ぶりな「かわいい」建物です。

大型の民家は迫力があってよいのですが、そのぶん改修の際に空間を持て余したり

工事費がかさんでしまうので、小ぶりであることは決して悪いことでありません。

 

昔からの農村地域にある建物なので、母屋の裏には馬小屋が連結されていました

(現在は馬はいません)。

 

道路は南側で立派なお庭もあります。

 

 

見てのとおり2階建てです。

2階の屋根は切妻、1階は四方をぐるりと下屋が廻っています。

 

 

瓦は近年葺き替えられたそうです。

ガルバやスレートにせず、また瓦に葺き替えるというのが

なんともニクイですね。

 

埼玉県の深谷に近い土地なので、葺き替える前の瓦は小判の深谷瓦

ではなかったかと思います(現在は製造されていません)。

小判の瓦は地域ごとに特色があるため、屋根瓦がそのまま地域の景観を構成する

重要な要素になります。

 

ただ、瓦を新しく葺き替える際、いまどきの規格化された瓦に変えられることも多く、

せっかくの瓦屋根が地域の特色を消し、景観まで画一化してしまうことがよくあります。

 

地域密着の小判の瓦は、雨漏りなどがなければぜひ残したいところです。

 

 

葺き替えられた瓦は「雁足」も通っていて、状態の良いピシッとした印象です。

棟に針金が見えないので、平成13年以降の耐震性のある工法で葺き替えているようです。

 

 

写真では庭木越しに玄関が見えます(右側)。

玄関の左側は古民家の定番・縁側です。

 

写真からは分かりませんが、敷地の周りは畑、道路の南側は田んぼ、

夏は風が吹けば縁側で涼しく過ごせる環境が揃っています。

 

逆に冬は、南側に日射しをさえぎるものがないので、日がサンサンとして降り注いで

あたたかな縁側になります。

 

絵にかいたような素敵な古民家です。

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