古民家の瓦屋根をどうすべきか?
改修の際、非常に頭を悩ませる問題です。
古民家らしい外観をキープするなら、むろん瓦のままがよいでしょう。
ただ、前回までにお話ししたとおり、古い瓦がそのまま使えるかどうかは
現場で確認しないことには何ともいえません。
古い瓦屋根の処遇は、大きく分けると次の3パターンに分けられます。
1)部分改修
2)葺き替え
3)他の素材に葺き替え
それぞれのメリット・デメリットをお話しする前に、
そもそも瓦とはどういう建築材料なのかについて簡単に触れておきます。
ひとくちに瓦といっても、その種類はとても豊富です。
新築で瓦を葺く場合、
たとえば瓦屋さんには、「三州瓦、いぶし瓦、和型(J型)、53A」と指定して発注します。
これは順番に「産地」「焼成法」「型式」「大きさ」を表します。
分けようと思えばさらに細かく分けられますが、
ひとまずこれらの概略をお話ししましょう。
というのも、これを知れば「古民家の瓦屋根をどうすればよいか?」という疑問が
おのずと解決に導かれるからです。
日本史の授業で勉強したかもしれませんが、
瓦は飛鳥時代に大陸から伝来したものです。
仏教伝来の少し後で、かれこれ1400年以上の歴史があります。
はじめは仏教寺院の屋根だけに使われていました。
国宝かつ世界遺産の「元興寺極楽堂」〈がんこうじ ごくらくどう〉の瓦は、
ほとんどが奈良時代の瓦といわれています。
一部に赤茶けた瓦があるのですが、それは飛鳥時代の瓦ではないかといわれています。
現存する日本最古の瓦ですが、博物館に収蔵されているわけではりません。
いまも現役として使われています。

元興寺極楽堂の屋根瓦。極楽堂の西側の屋根です。行基葺き〈ぎょうぎぶき〉という珍しい葺き方で、いまでは数えるほどしか現存していない貴重なものです。軒先や隅棟の瓦は新しい時代のもののようです
風雨にさらされながらも、1400年以上使われ続けているわけです。
そんな素材、瓦以外では石材(ピラミッドとか)くらいしかありません。
当時の瓦と現代の瓦は組成や製法が違います。
まったく同じものとはいえませんが、瓦という素材の耐久性が異常に高いのは
間違いありません。
粗悪な瓦でなければ、50年くらいは余裕で長持ちします。
ただし、建物を取り巻く環境や気象条件には影響を受けます。
それは瓦以外の素材でも同じですね。
というわけで、「屋根の仕上げ材のうち最も耐久性が高いのは瓦である」。
これは歴史が証明していることで疑いようがありません。
改修の際、耐久性を第一に考えるなら
再び「瓦」に葺き替えるのがおすすめということです。