西側の妻面を見てみます。
妻面とは、屋根の棟と直交している面のことです。
滑川H邸の場合は
ここは通常、真壁として小屋梁と化粧貫を見せるやり方が定番です。
しかし滑川H邸では、押縁下見板を張って梁組が見えないようにしています。

ここを妻面といいます
下見板の外壁に四角い箱が4つ付いているのが分かります。
これは小屋梁の先端が内部から外に飛び出している部分です。
色が黒いのは、雨で濡れると腐りやすくなるので、
板金で包んで保護しているわけです。
建物は60~70年前のものですが、板金のほうはそれほど古く感じません。
瓦屋根を葺き替えたときに設置したか、元々あった板金包みをそのときに
交換したのではないかと思います。
同じように、下見板の外壁も当初からのものではなく、後年張られたものでは
ないかと思われます。
写真を見ると全体的には色褪せていますが、棟木直下のケラバ裏の部分、
つまり雨があまり当たらない部分の板は、色がかなり明るいままです。
下見板というのは外壁の場合、板の厚みは最低3分(9㎜)で、
一般的には4~5分(12~15㎜)です。
しかし、この下見板は2分(6㎜)くらいに薄く見えます。
現場で見たときはどうしてこんなに薄いのだろうと思っていたのですが、
後張りと考えれば合点がいきます。
次に破風板を見てみましょう。
破風板とは、切妻屋根の端にある山形に取り付けられた細長い板のことです。
これは意匠的な要素もありつつ、棟木・母屋・出桁などの木口を保護する
役割もあります。

破風板の幅の変化に注目してみましょう
破風板は現在の住宅にもありますが、決定的に違うのはその「幅」です。
破風板の先端と頂点で幅を変えています。
写真を見ると分かりますが、板の幅が先端(軒先)の板幅のまま昇っておらず、
棟に近づくほど幅が広くなっています(いまの住宅はここをだいたい
同じ幅にします)。
頂点の幅を広くするのは、破風板を下から見上げたときバランスよく
見えるようにするためです。
滑川H邸のように、頂点付近で緩く湾曲させることもあります。
このような破風板の細工により、建物が優しい印象を与えるわけです。
逆に、破風板の幅を棟にいくほど細くした事例もあります。
滅多に見ることはないのですが、ある有名な住宅の破風板がじつは
そうなっています。
小金井の江戸東京たてもの園にある「前川國男自邸」です。

前川國男自邸の破風板。棟にいくほど細くなっています。機会があれば、たてもの園で確認してみてください。たてもの園は周りの広場も含めて一日遊べます