どこまでも基本に忠実
平屋で実現したエアコンのいらない家

沼田T邸[新築・戸建住宅]

屋根のかたちと窓の位置

群馬県沼田市に建てられた大きな平屋です。もともとこの敷地には築200年程度の古民家がありました。一時はそれを改修して住むのもいいかも、という案もあったのですが、お施主さんはいろいろ考えられた末に新築を決断されました。そして完成したのが、エアコンのいらない平屋です。

 

写真を見てお分かりのとおり屋根形状に特徴があります。「段違い切妻」ともいうべき屋根の形は、軒のほうが南側になります。南から北に向けて屋根がせり上がっているのは、南側の窓から取り込んだ風を北側の高い位置にある窓から抜いていくためです。これにより、夏の室内は風がスムーズに流れていきます。

南面外観。大きな半屋外空間を内包した堂々たる平屋です

北西側から見た外観。高い位置に横長の窓がたくさんあります。この窓の細かな開閉によって室内に流れる風の量を調整していきます

西側から見るとこんな感じ。屋根の段違いがよく分かります

玄関ポーチ。昔の日本家屋を意識してドアではなく引戸を採用しました

南側からリビング、ダイニング、キッチンが並ぶ

室内は南からリビング、ダイニング、キッチンが一直線に並びます。その東側に洗面、浴室などの水廻り、西側に和室や書斎を配置しました。

玄関。玄関とリビングを仕切る引戸は内部に精巧な組子細工が収められています

引戸の組子細工。地元の有名な職人さんにつくっていただいた特注品です

手前からリビング、ダイニング、キッチンという間取り。屋根勾配に合わせた勾配天井が室内全体に伸びやかさを与えています。頂部の窓は電動式で、風の流れを細かく調整できます。中央部のパネルはエアコンのいらない家ではおなじみの「HR-C」。輻射熱による冷暖房でエアコンにはない快適さをもたらしてくれます

キッチンはシックな大人のイメージで統一

西側の書斎からは沼田の雄大な山々が見えます。目の前の線路には週末SLが走ります

小割の窓で風を自在にコントロール

南側の掃き出し窓には、その上に小さな窓もついています。これは夏場の風通し用の窓です。小さいので防犯上も安心。夜でも窓を開けたまま寝られます。

 

掃き出し窓そばの床面にあるガラリは、冬、室内頂部にたまる暖かい空気をダクトで回収して床下から排出させるための吹出口です。暖房機器のように温風が吹き出してくるわけではありません。室内の空気を上から下へ大きく撹拌させることが主な目的です。これにより室内の温度ムラがなくなり快適な環境が保たれます。

南面の窓。デザイン優先で大きな窓を設けるのではなく、窓を小割にして風の調整を自在にできるようにするのがエアコンのいらない家の基本的な考え方です。外壁材はケイミューのSOLIDO。自然の色ムラが特徴的なセメント板です

南側の床面に設置した暖気の吹出口

詳細な解説をブログのほうに書いていますので、よかったらそちらもごらんください。

 

(意匠設計:檀上新建築アトリエ、写真:西山輝彦)